片思いしてます
どれくらい歩いただろう。



「大丈夫?」



航也さんが振り返ってくれた。



その顔は優しく、その顔で私の恐怖は緩和された。




「ありがとうございます」



私は、小さな声でお礼を言った。



「…」



航也さんは何も言わず、そのまま私の家の方へ歩く。




つながれた手はそのままで。






家に着く。



家は真っ暗。



この闇が私に再び恐怖をよみがえらせる。



「…」



私は、家を眺める。



「…しばらく一緒にいようか」



私の様子を見て、航也さんが言ってくれた。



「…」



私は、小さくうなづく。




今は一人にはなりたくなかった。




あんな怖い思いは初めて。



自分が招いたことだけど。



でも、今は誰かと一緒にいたい。





私は、航也さんの手を離し鍵を開ける。

< 95 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop