片思いしてます
母も同じようなことを言っている。



お金のことは心配いらないからって。



でも、自分でできることは自分でしたい。



小さい頃から母が頑張ってきた姿を見ているから、やっとバイトができる年齢になって母の力になれるって思ったから。





私は、ゆっくり立ち上がり、お湯を沸かしに行く。






なんか、航也さんとこんな会い方したくなかった。



航也さんがいなかったら今頃大変なことになっていたかもしれない。



でも、あんな姿を見られたくなかった。





私は、緑茶をいれ航也さんに運んだ。




「でもなんであそこにいたの?」


「母がいないからDVDでも借りて帰ろうかなーって思って」


「そうなんだ、実は俺もDVDかりて出てきたところで琴子ちゃんのことみつけて」


「そうなんですか」


「俺が降りる駅って次の駅なんだけど、駅前になにもなくてよくあそこのレンタルショップに行くんだ。今日も土曜出勤で明日は休みだから夜中みようと思って」


「そうなんですか、偶然ですね。
でも、次の駅ってなにもないんですね」


こんなに気さくに話せる人だったんだ。



私は、クスクス笑う。



「あっ、次の駅のことバカにしてる?」



「いえ、そういうつもりじゃなくて。
それで、DVD何借りたんですか?」


私は、話をべつの話題にした。



「ずっと借りたかった新作。いつも、レンタル中だったんだけどひとつだけ残ってて本当によかった」


航也さんは、DVDを私に誇らしげに見せた。



子どもっぽいところもある人。




「それ私も見たかったんです」


「じゃ、一緒に見る」


「えっ?」


「あ、ごめん。
人の家にお邪魔してるのに」


航也さんは気まずい顔になる。



「川北さんがよかったら一緒に見ませんか?
そしたら、私は借りなくてすむんで」



「でも、いくらなんでも、有希さんのいない家にあがりこむなんて」





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