水晶の涙



「それ以上、悪魔に近づくな!」


ルナ先生が私を食い止めようと手を伸ばすが、それを私は振り払い

冷たく言い放つ


『この子は、私を迎えに来たんです。…邪魔しないで下さい。』


悪魔に近づく歩みを止めないまま、'コウ'と呼んだドラゴン型の悪魔との距離を縮め、ソっと触れる

すると悪魔は、黒い血が付いた大きな前足で、私の体を抱き抱えた

と、その時


「アリアッ!」


『…貴方は……』


ハァ…ハァ…
と言う息遣いと共に、背後から聞こえてきた

カイ君の大きな声


その声に、

『カイ君!』
って、声を出したかったのに


『…貴方、カイ・オリン君ね?』


カイ君と初対面みたいな言葉を口にして、私はチラリと、カイ君を見ただけだった




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