水晶の涙
「えっ、ルシルちゃん!お昼ご飯は!?」
『先に食べてていいよー!』
振り向きもしないで、ただ寮へと走りながら大声で叫んだ
廊下を歩いていた周りの生徒達からの目は何だか痛かったけど、とにかく走った
「…――」
〈何で、走るの?〉
スカートの金属部分に引っ掛けてある、花の刺繍をした巾着袋
それがゴソゴソと動き、小さな問い掛けが聞こえた
『…怖いから。』
ルシルちゃん達が、
貴方に気づくんじゃないかって
カイ君が、
貴方の事をあの場で言うんじゃないかって
カイ君が、
…私の事を、異様な目で見るんじゃないかって
怖かった
〈…そう〉
悪魔は小さく、そう言うと、巾着袋の中でまた、静かになった