水晶の涙



「アリア。」


後ろから、小さな声で自分の名前を言うカイ君の表情は、とても心配そうで


『…大丈夫。』


そう、笑顔で言った

…けど、心中は
大丈夫には、なれない


「テストは一人ずつ行う。順番は問わないから、自主的に、やりたい生徒から自分の名前を言って始めるように。」


そう先生が告げて、直ぐに立ち上がったのは


「…ハル・リイチです。」


ハルちゃんは一度、悪魔を上から見下ろすと、

静かに、3cm位の円形の石を取り出した


…途端に、聞こえた


「―――!」
〈死にたくない〉


『…ぁ…』


頭の中に響くのは、ハルちゃんの目の前のガラスケースに入った

悪魔の心





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