初恋カフェオレ
「ねえ和束さん。三沢さんにコーヒー持って行ってあげてー」
ニコニコと楽しそうな笑顔の下には湯気たつ黒の液体が並々入っている白いマグカップがトレイの上でちょこんと、行儀よく座っていた。
はい、と有無関係なく強引に渡され背をドンっと押された。
転びかけたじゃないか。
批判の色を込めて後ろを振り返ってみると、ニコニコ女の後ろには女の同僚が何人か固まって、こちらを見て期待した目で眺めていた。
むっとしながら、私はこぼさぬようトレイを三沢の机まで運んだ。
背後の大量の視線をシャワーのごとく浴びながら。