トリプルトラブル【完】
  「あれっ、其処で良いのか?」
正樹が寂しそうに言った。


「此処なら思いっきり眠れるからね」
美紀が嘘をつく。


(――パパあれは、此処はママの席だから乗っちゃ駄目って言ってるようなもんだよ)


そう思う。
でも美紀はこの機会に、此処でこれからの自分の生きる道を模索しようと思っていた。




大阪で誘拐された女児が美紀の母だとしたら……


美紀は正樹と離れる事が怖かったのだ。


(――誘拐犯が狙うような家庭だ。きっと裕福なんだろう。

――もし本当に其処が母の実家だったら……

――もしも私が欲しいと言われたら……)


美紀はいつの間にか泣いていた。

美紀にって正樹と離れる事は死にも等しかったのだ。


(――後部座席で正解だったかな。

――パパに見つかったら、きっと心配するから……)

美紀はそっと涙を拭いた。




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