トリプルトラブル【完】
 正樹は正樹で、三人の告白を目の当たりにしておどおどしていた。

美紀が心をとらえて放さない正樹。
どうしようもない程苦しみ、もがいていた。


正樹も美紀の中に珠希を感じていたが、それを口にする訳にはいかなかった。


それを口実に、自分が美紀を襲う。

正樹はそうなる事が怖かった。




好きだと言えばいい。
解ってはいる。
でも言える筈がない。
正樹には此処は生き地獄だった。


花火が上がる度、一緒に過ごした珠希を思う。



プロレスラーを辞めてからもトレーニングに勤しんできた。

珠希が作り上げてくれた肉体と体力を維持する為に。


正樹は珠希を忘れる事など出来なかった。


だから……

部屋の鍵は掛けなくなった。

珠希に帰ってきてほしくて……
魂でも良いから添い寝してほしくて……


そんな男が珠希の代わりに美紀を愛してはいけないと思った。
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