トリプルトラブル【完】
 大は察したようだ。
この家に住み着いた、珠希の存在に。

それは亡霊ではない。
それぞれの心の中に、思い出と言う足かせになって。


『ねえ、あんた達。美紀ちゃんが誰を好きなのか知ってて言ってる訳?』

沙耶の言葉が何を意味しているのか気付いたのは、その後の正樹の行動からだった。

あのおどおどした正樹の態度は、美紀を本当は愛している意思表示ではなかったのだろうか?

大にはそれが切なく映ったのだった。
正樹は大の父親より十歳も若い。
体だって鍛えているから、ビシッと決まってカッコいい。
でも、親友・秀樹と直樹にとっては間違いなく親父なのだ。


子供と親が三つ巴のバトルを繰り広げる……

今まで美紀の父親だった正樹と、兄弟だった秀樹と直樹。

きっと美紀も苦しいはずだと思った。

でも、この争いに決着を付けるために今此処に自分がいるのではないかと思ってもいた。




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