トリプルトラブル【完】
  (――あの花火大会の日に初めて知ったんだ。美紀ちゃんがお父さんさんを愛していることを)

そう言ってやりたかった。
でも口を瞑った。

大だって辛い。
でも、この二人はもっと辛いはずだった。

それでも大は思っていた。
一番脈があるのは自分ではないかと。

幾ら美紀が戸籍上の父が好きでも、正樹は受け入れるはずがないと思っていたからだった。
まして、兄弟として育ってきた二人を愛せはしないと考えていた。


「俺やっぱり美紀ちゃんのこと好きだわ」
大がしみじみと言う。


「俺だって大好きなんだ」
拳を握り締めて、辛そうに二人が言った。


「流石に双子だ。以心伝心ってことか?」


「だから尚更辛いんだ」

そう……
二人ともそれぞれの気持ちが解るだけに思い悩んでいたのだった。
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