トリプルトラブル【完】
 美紀はバックの中から大学ノートを取り出した。


「見て泣きました。母はパパを好きだったんです。初恋だったんです。母も」

美紀は日記を胸に抱いて、泣いていた。


「言えなかったんです。孤児だったから。だから産まれた場所はコインロッカー。そう言って。きっと自分を戒めたんだと思います」

声を詰まらせた美紀。
優しく肩に手を置く沙耶。


「私解ったんです! 私の中に母が生きていると。憑依していると」
突然、余りにも唐突に美紀が言い出す。


「憑依!?」

沙耶は驚いて、思わず手を引っ込めた。


「それ以外考えられない。きっと産まれたばかりの私のことが心配で」


「解るわ」
沙耶は頷きながら優しく美紀の体をバグした。

憑依だの何だのと怖がっている場合ではなかった。
沙耶は美紀を本当は抱き締めてやりたかったのだ。


「だけど、それだけじゃない。プロレスラーのくせに優し過ぎるパパだったから、こんなに好きになったんです」

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