トリプルトラブル【完】
 美紀は沙耶に甘えながら、正樹を愛した産みの母の苦しみことを思っていた。


正樹が大好きだった智恵は中学卒業後一人暮らしを始めた。

元施設長を保証人に頼んで、正樹の実家の近くにアパートを借りた。
少しでも近くにいたかったのだ。

そんな事情を知らない正樹は、結婚の準備を着々と進めていたのだった。

傷ついた智恵を慰めたのが美紀の父親である真吾だった。

心の底から愛を捧げて、また支えてあった。




やがて二人の間に美紀が宿った。
天涯孤独の者どおし、やっと巡り会える家族。
真吾は幸せに酔った。


どうしても結婚と妊娠した事実を発表したいと真吾は焦った。

智恵を日の当たる場所に出してやりたかったのだ。

出来れば、本当の親に逢わせてやりたかった。
子供が産まれる前に……。









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