トリプルトラブル【完】
 真吾は幸せを噛みしめながら、その事実をマスコミに発表したのだった。

美紀は確かに二人の愛の結晶だったのだ。


結婚と妊娠を明かしたことによって襲われた智恵。

狂気から家族を救うために、自ら犠牲になった真吾。

子供の頃からただ智恵だけを愛し、見つめてきた真吾にとっては何事にも代えられない大舞台だったのだった。




「母は本当は誰を愛していたのでしょうか?」

美紀が資料をしまいながら言う。


「うーん、解らないわ」
沙耶が言う。

でも本当は沙耶は知っていた。
正樹を愛していたから、美紀に憑依したことを。
もし自分が死んでも、正樹と珠希なら自分の子供を育ててくれるだろうことも。
だから美紀に……。

『大きくなったらパパのお嫁さんになる』
そう言わせていたことも。


沙耶は結城智恵が愛おしくさえ思えていた。




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