トリプルトラブル【完】
 それでも美紀はキッチンに立った。


意を決する。

そんな言葉がピッタリだった。
美紀は、それほど珠希が大好きだったのだ。


「ママごめんなさい……」
美紀は泣いていた。


幾らパパが……
正樹が好きでも……
珠希を蔑ろには出来なかったのだ。


時々自分の中に珠希を感じる。
その度ハッとして、沙耶の言われた真実を思い出す。


『美紀ちゃんの体の中には、お義兄を愛した姉の魂が居るのよ』


全てはそれだった。

自ら正樹を愛した訳ではなかったのか?

その事実が美紀を苦しめていたのだった。

出来ることなら知らずにいたかった。
でも、それではもっと苦しい。
それでもいいと思った。
大好きなママからパパを奪うなんて自分には出来るはずがない。
その時はそう思っていた。
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