トリプルトラブル【完】
 珠稀の本気を知った時智恵は泣いた。
そして辛すぎる恋に無理やり幕を引いたのだった。


『姉と正樹さん、インターハイの地区予選会場で出会ったの。正樹さんは先輩の応援に来ていたの。学校は違っても同じ町の仲間として意気投合して』

美紀にはそう言った。
本当のことなど言えるはずなんかなかったのだ。


あの美紀の告白を、沙耶は冷静に聞いていた。

美紀を応援したいとも思えてきた。


思い出は思い出として、心の中に閉まっておこうと思えるようにもなった。


嫉妬から、正樹にお見合いを勧めた。

でもそれによって、未だに正樹を思う気持ちに気付いてしまった沙耶だった。


(――本当は今でも大好きなのよ。

――アナタを……
お義兄さんを……)


でも沙耶には家族が居る。
愛する旦那様と子供達も居る。

沙耶は複雑な心境で、正樹を見つめていた。
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