トリプルトラブル【完】
 フェンスの向こうに秀樹が見える。


秀樹はグランドでウォーミングアップをしていた。


美紀は何かが気になり、手招きで秀樹を呼んだ。


口元に血のような物が付いていた。

良く見るとそれは、朝食時に掛けた物のようだった。


「何だよー」
不機嫌な秀樹。


「顔洗った?」
美紀は自分の口元へ手を持っていった。

「秀ニイの此処、ケチャップ付いてる」


「えっ!?」

秀樹は慌てて、口元に指を持っていった。

でも指先には何も着いてこなかった。
秀樹はユニフォームのポケットから携帯電話を取り出し、ミラー機能で自分の顔を確認した。


「お前がオムレツなんか作るからだぞ全く」


「自業自得よ! ちゃんと起きてさえいればねー。でも、あれっ確か秀ニイ、携帯持ち込み禁止になったはずじゃなかったっけ」

すかさず言う美紀。


秀樹は慌てて携帯電話をポケットに締まった。


「いけないんだ。生徒会長に言い付けちゃうぞ」

美紀は不敵な笑みを浮かべた。


「えっー。直樹に」

秀樹は頭を抱えた。

直樹は生徒会長で、野球部のキャプテンでもあった。


正直、携帯の学校持ち込み禁止はやり過ぎだと思う。
でも授業中メールしている者が大半で、やもうえない処置だったのだ。



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