トリプルトラブル【完】
 放課後。自転車置き場。

美紀はテニスラケットの入ったスポーツバックを前籠に乗せた。

珠希の形見となったラケットをとても大切にしていた美紀。

もし自分が国体の選手になれたらそのラケットで戦おう。
それが珠希の一番の供養になると考えていたからだった。


だから何時も珠希の仏壇の前にテニスラケットをお供えしていたのだった。


自分は昼間使わせてもらっている。
だけど夜はそれで楽しんで欲しかったのだ。




「ママ。力を貸してね。もうじき試合があるの」


他力本願はいけないことだと、自分自身が一番分かっている。

でも美紀は、親子でインターハイに出たいと思っていた。


秀樹直樹の甲子園同様、美紀も珠希の夢・国体の選手を目指して頑張っていたのだった。
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