トリプルトラブル【完】
 直樹はキャプテンとて張り切っていた。
美紀にカッコイイところを見せたかった。
夕べのお風呂の中で、兄弟としてではない感情に目覚めて戸惑った。

そしてそれは、美紀が小さい頃から好きだった。
と言う気持ちに辿り着く。

直樹はその時、大の事などすっかり忘れていた。




野球部は直樹が新入団の頃には余り纏まっていなかった。
上級生はてんでんに下級生をしごいていた。
でも太刀打ち出来るはずがない。
それでも直樹は屈せずに、それをバネにしてチームワークを勝ち取ろうとしたのだった。

時には炎天下での草むしりも命じられる。
その機会に、グランド整備をやってのける。
ローラーでの地盤固めやトンボでのならしなどを。

それは少年野球団で培ったスポーツ精神だった。


『一礼に始まり、一礼に終わる』

そう教えてくれた監督。
それはグランドに対する礼儀だった。


直樹は頑張り抜いた。
だから、野球部の部長になれたのだった。




< 87 / 229 >

この作品をシェア

pagetop