トリプルトラブル【完】
 「よし! パパにかかって来い」
秀樹と直樹は顔を見合わせた。
いくら元プロレスラーだったとしても、現役の高校球児相手に勝てる筈はなかった。

「いいから来い!」
正樹は両手を広げた。

秀樹と直樹は子供のように正樹の胸に飛び込んで行った。

正樹は小さな体で、大きな二人を受け止めた。

「どうした? 美紀が本当の兄弟じゃないと知って、好きになったか?」
ズバリと聞く正樹。
頷く二人。

「辛いな」
正樹は二人を抱き締めながら泣いていた。




沙耶が、一度断ったお見合い話を再び勧める為に訪問したあの日。
正樹は改めて美紀の存在の大きさを知らされた。

自分の為に甲斐甲斐しく働く美紀を、正樹も愛おしく思っていたのだ。




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