それでも世界はまわる -いつかの夢-
そんなことはつゆ知らず、美佳は甘えるように慎吾を上目遣いにする。

「今日は慎吾くんはどーするん?」

「ああ、うん、ゆめシティで会う約束だよ」

相談もとい愚痴を聞いてもらおうと思ったが、理沙と一緒なら諦めるしかないか。バレンタインだから仕方ない。

ゆめシティは立雁市にあるデパート。
全国区のジャストと違って地方に展開している。

大神山市の逆端にももう一店舗あるし、このあたりではどちらかと言えばゆめシティの方が身近だ。

「そかー。りーちゃんによろしくね」

慎吾は照れたように鼻の傷をこする。


   *      *      *


結局今日は終礼が終わるまでりおんと話せなかった。

「美佳。送るよ」

りおんの方から声をかけてくれなければ、そのまま帰ってしまうところだった。

「うん、ありがとう」
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