それでも世界はまわる -いつかの夢-
「りおん君と付き合うの、もうやだ・・・」

あの地獄の中、平井が言ってた。

 あの放課後覚えとる?
 あれ、バレンタインに近付くなって警告だったんよ。みんなの神楽君なんだから独り占めはダメよね?
 ホワイトデーは、分かるよね?

「しっかりして。そんなことで別れたらもったいない、二人にはもっと先があるんだけぇ。りおんは美佳さん好きだけぇ冷静になれんのよ。大丈夫、僕が守るから」

――大丈夫、僕が守るから。

中学の時も、慎吾はこう言ってくれたっけ。なんて温かい言葉。

バスに乗るとすぐ美佳は眠ってしまった。寝顔は疲れきっていて、安らかという感じではない。

水瀬に着くとそっと声をかけ揺する。

バスを降りると、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。もう雪は解けたがまだ寒い。

「家まで送るよ」

バス停は村役場のところにあって、そこから慎吾の家と美佳の家は逆方向だ。
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