それでも世界はまわる -いつかの夢-
ああ、この光景、何ヶ月か前にも体験した気がする・・・。

でもあの時とは違う感情。

母は突然の展開に口を抑えていたが、父は軽く笑った。

「はは。美佳は明日にはもう、わしらのところからいなくなってしまうんよ」

「お父さん。お母さん、ごめんなさい。あたしりおん君とは結婚できない。慎吾くんと二人で歩いていくって決めたん・・・ううん」

「三人、です」

父もさすがに堪忍できなくなったようだ。

「美佳、お前・・・!?」

「慎吾くんの子供が」

「だめだ! すぐに堕ろしなさい!」

鬼のような形相で睨む父。泣きそうな母。

「決めたんよ。慎吾くんなら、幸せにしてくれるよ」

「何言っとるん! 結婚式は、もう明日なんよ!? まわりからなんて言われるか!」

「お父さんはあたしの幸せより、まわりの方が大事なん!?」

そう投げつける美佳に、父はテーブルをどんと叩く。

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