それでも世界はまわる -いつかの夢-
二人が何も言えずにいるのに、涙していた母が見兼ねて父を抱いた。

「お父さん、もうやめましょう。確かに二人がしたことは正しいことではないかもしれない。でも・・・娘なんよ。私らの、可愛い娘が決めたことなんよ」

 父の涙は、その時初めて見た。

「それに、反対してもきっと駆け落ちするわ。慎吾ちゃんはそんな無責任なことしないでしょうけど、美佳は、あなたの娘ですから」

「はは・・・随分昔のこと掘り出すな」

父と母はやがて微笑んだ。

美佳は苦しんだ。

こんなに両親を傷付けてまで手に入れるものだっただろうか? 

しかし、他に道は考えられなかったのだ。

「ごめんなさい・・・お父さん、お母さん・・・」

「ええんよ。お前は、わしらの娘じゃけぇ。子供の幸せを願わない親なんか、おらんわね」


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