君が描いた一ピース


「え? パズルを?」

「ああ、そうだ」

 彼の言った通りにパズルをバラバラにしていく。ピクミンバイキンマンの葉っぱだけのピースを見ながら少し笑う。

「あのさ」

「何?」

 急に緊張した空気になった。彼の手が少し震えていて、パズルを分解するだけの作業に大分時間がかかっているようだ。

「……また来年、このパズルを二人でやろうぜ。それでさ、今まで何があったとか色々話しながら、またこのパズルを作り上げよう」

 彼にしては珍しい言葉だった。私たちはカップルではあるが、お互い友人のようにワイワイ騒ぐ時が多く、愛の言葉の呟き合いなんてロマンチックなことは未だにない。そんな彼がこんなことを言い出すものだから、記念日って凄いなと思った。

「で、さ。その次の年も、そのまた次の年も……何十年後も、こういうのを続けていこう」

「何十年後って、もう私たち成人して……それどころかおばちゃんだよね」

 私がそう言ったのは仕組んだこと。彼の反応を見てみたくてわざとそんなことを言ってみた。パズルに向けたままこちらを向かない彼に目を向ける。随分、耳が赤いな。

「当たり前だろ。俺たちの子供がいる年だろうな。それからも、ずっと、な」

 今日は中々恥ずかしい思いをさせてくるではないか。やっぱり、私たちって恋人同士なんだな。そういうことを、顔を直視して言えない彼だけど私はこういう関係が一番好きだ。ずっと飽きることなく、それこそ次の年もその次の年も……何十年後だって続けていきたい。

 なんて子供っぽい。きっと世間の大人が私たちを見たら「子供はいいねぇ」とか言い出すだろう。だけど、まぁ。それを心地よいって思っている私がいるんだから。そんな私を好きになってくれた彼がいるんだからいいよね。長く続く関係だって信じてもいいよね。






.
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop