【短編】咎(とが)
「そんな、なにそれっ、それでも、神様なのっ?」

やっぱりこいつは悪魔だった。自分の都合で人間を不幸にするなんて、神様のすることじゃない。

でも除消は、顔色一つ変えずに、言った。

「ワキマエロヨ、人間。サッキモ言ッタガ、何デ神様ガ人間ノ味方ナンテ決メ付ケルンダ?俺タチハタダ、オマエタチ人間ヲ含ム自然ヲ創リ、ソレヲ壊スダケナンダゼ」

確かに除消は言っていた。崇め奉っていれば救われるのか、って。

それはつまり、人間の信仰心など、彼らには全く興味のないこと。

「俺様ニトッテ、オマエガドウナロウト、ソンナノ知ッタコトジャネエンダヨ」

除消のとどめの一言が、わたしの心と脳みそに突き刺さった。

「マア、タイテイノ神ハ、ソイツニ気ヅカレナイヨウニ咎ヲ負ワセ、地獄ニ堕トシ、自分ダケイイ思イヲシテイルンダガナ」

なんで。

「コウシテ正々堂々、オマエノ前ニ現レ、丁寧ニ説明マデシテヤル俺様ノ、律儀ナコト。ドウダ、感謝シタクナッタダロ?」

なんで、わたしばっかり、こんな目に遭うの?

この町に来て1年と少し。

今までずっと、耐えてきたのに。我慢してきたのに。

わたしの人生は、わたしの思うようには動かない。

わたしの人生なのに、わたし以外の奴らの都合に振り回されている。


……こんなじんせいもういやだ。


今までずっと抑えていたモノが、溜まっていたモノが、それを抑えていたものがひび割れると同時に、溢れ出し、爆発した。


「ふざけないでよっ!」

その声は涙声でもあり、怒声でもあり、悲声でもあった。

「なんでっ、あんたの都合なんかっ、しきたりっ? わたしには関係ない!咎送りっ? そんなの、他の奴にやらせてよ! わたしを巻き込まないで!」

ありったけの力をお腹にこめて、わたしは怒鳴り散らした。

わたしの剣幕に驚いたのか、それともただ、大事な生贄を手放したくなかったのか。

除消の雰囲気がまた変わり、声のトーンが高くなり。今度はわたしを、なだめにかかってきた。

「マ、マア落チ着ケヤ。確カニ、オマエノ言ウコトモ最モダ。……コウシネエカ?」
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