【短編】咎(とが)
除消が提示してきた、一つの提案。

……それは。

「俺様ノ『神力』ヲ、オマエノ望ムヨウニ使ッテヤルヨ。神様デアル俺ガ、オマエノ願イヲ叶エテヤル。コレデドウダ?」

お伺いを立てるように、除消が、俯いたわたしの顔を覗き込んでくる。

……神力?かみさまの、ちから?

「ト言ッテモ、大地震ハ無理ダゾ。俺ニ出来ルコトハ『消ス』コトダケダカラナ。」     

慌てて除消が付け加えてきた。

……消す?

「消す、って……、具体的に、何を……?」

大声を出しすぎて、正直少し疲れたわたしは、除消の提案に耳を傾けることにした。

「文字通リダ。物ダロウガ記憶ダロウガ病気ダロウガ人ダロウガ、何ダッテ消セルゼ」

自慢げに胸を張る除消。でも、いまいちピンとこない。

「……実演シテヤロウカ?」

釈然としないわたしを尻目に、除消は動き出した。

向かった先は、全く手入れがされていない、雑草の海原真っ只中。

「ホッ」

掛け声とともに、役に立たないと思っていた小さな羽をばたつかせ、空を飛ぶ除消。

飛べることにまず驚いたけど、次に見た驚愕の光景に、わたしは言葉を失った。

真ん丸な頭を雑草が生い茂る箇所に向け、頭頂部を上下前後左右、いろいろな方向に動かしていく。


ごしごしごし。ごしごしごし。


まるで、そこに、巨大な丸い消しゴムをかけるかのような仕草。

そして、除消の動きに合わせ、雑草がみるみるうちに「消えて」いく。

それは紛れも無く、神の成せる業。人の理解を超えた世界。

わたしは、がたがた、がたがた、震えだした。

除消を初めて見たときとは、また違った「震え」だった。

恐怖を超えた恐怖。

畏れ。神への、畏怖。
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