【短編】咎(とが)
わたしに話しかけてくる子がいなくなって。わたしも話しかけることはしなくて。

卒業式があって。

他の子達は六年間一緒に過ごした仲で。その中に、三ヶ月だけのわたしがいて。

三ヶ月のうち、二ヶ月と二週間くらい、学校で一言も喋らなかった私が、卒業文集を書かされて。

「この学校の一番の思い出は?」

の欄に、「方言」と書いたら、例の女の教員から

「都会の子には新鮮だった?」

なんて馬鹿で間抜けでトンチンカンなことを言われて。

そうして、小学校を卒業した。

この先、就職するときに、履歴書の学歴に、たった三ヶ月しかいなかった学校の名前を書かなければならないと思うと。

本当にぞっとした。

前の小学校から卒業文集が送られてきて。文集にわたしの作文は載ってなくて。

「小学校の先生になりたい」

という夢も書いてなくて。卒業写真の中にも、わたしの写真は載ってなくて。

その日のうちに、文集は火で灰にした。


小学校の数が少ない地域で、当然、中学校の数も少なくて。

今の小学校が、学年ごと、そのまま中学に上がると知ったとき。

下校の上り坂で、声を上げて泣いた。

せめて、違う人たちとなら。

中学に入って、一から、やり直せることができたなら。


中学生になって。やっぱり誰からも話しかけられなくて。

わたしも誰にも話しかけなくて。

わたしは居ても居なくても同じになって。

わたしは特別どころか、どうでもいい存在になって。

体育祭とか、修学旅行とかが本当に苦痛で。

友達同士で班に分かれると、いつもわたしは一人残されて。

担任の教員に「どこかに入れてもらいなさい」なんて言われて。
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