紺青のテネレッツァ
―――――
浮遊感に似た不思議な感じがして、目を開けると‥
靄がかかったどことなく肌寒い場所に立っていた
光があるのか仄かに明るいが、視界が悪く結局何も見えない
おそらく此処は夢の中
誰も居らず、何もない。
足が地面についているのか、
いないのか。
今僕は立っているのか、
浮いているのか。
不思議に満ちたこの空間で僕はたった1人
どんどん僕の心を不安と恐怖が支配していった
「久しぶりだな小僧」
「誰?」
突如聞こえた声に肩が跳ね上がった
辺りを見回しても誰も居らず
声もどこから聞こえてきたのか分からなかった。
「あぁ、記憶がないんだったな」
「貴方は僕を知っているんですか?」
「もちろん。
お前から記憶を奪ったのは私なのだから。
‥というよりは、お前の願いを叶えてやっただけだ」
記憶を“奪った”?
奪われることを“願った”?
「どう、して?」
知らず知らずのうちに声が、指が、震えていた