恋した鬼姫
虎は、ハッと気づくと慌ててセラにまたベールをつけて言った。

「そんな姿だとすぐに人さらいにあうぞ!」

「人さらい?なんですか、それは?私の見た目そんなに変でしょうか?」
セラは、悲しそうな声で言った。

「違う!見たこともないぐらい美しさだ!ただ、あんまり美しいと悪い奴に捕まったりする。」

セラは、嬉しかった。なぜなら、角がない自分をそんなに誉めてくれるなんて思っても見なかったことなのだから。

「でも、悪い方はなぜ女子をさらうのですか?さらってどうするのですか?」
セラの質問に虎は、少し困った。

「つまり、売り飛ばしたりして…まぁ色々怖いことをされるんだ。大人になれば、いずれわかる。」

虎は、はぐらかすように言ったが、セラにとってはまた子供扱いされたことにムッとなった。

「だから私は、子供ではありません!そう言う虎様は、おいくつですの?見たところ、まだお若く見えますが。」

「俺は、17だ!立派な大人だ!」
虎は、自身たっぷりに言った。

「私と2つしか違わないではないですか。どうして虎様は大人で、私は子供ですの?!」


「経験の差だ。セラの見た目からして年が15だと経験が浅そうだ。実際に知らないことも多そうだしな。」
虎は、ニカッと笑った。

セラは、図星を指摘されて言い返せなかった。



突然セラは、慌て出した。虎との会話が楽しくて時間が過ぎていることにも気づかず、外から入ってくる光りが大分少なくなっていたことに気づいた。

「大変!早く戻らなければ皆が心配します!」
セラは、そう言うと立ち上がり秘密の扉を開けた。

「おい、もう行くのか?てか、凄いな。なんだそれ?何処に繋がっているんだ。」

虎は、秘密の扉を不思議そうに見た。

「虎様、ごめんなさい。私、もう行かなくては。」
セラは、寂しそうに言った。


「俺もセラのお陰で動けるようになったし、自分の里に帰る。しかし、まだまだセラと話がしたい。俺の里は遠くて、すぐ会えそうもない。だが、今日からちょうど一年後のこの日に必ず俺は、ここに参る。」
虎は、セラのベールを外しセラの顔を見て微笑んで言った。
セラは、そんな虎の顔を見ると余計に帰りたくない、心が締め付けられるような想いにかられた。

「虎様。私も必ず一年後の今日、ここへ参ります。」
セラも微笑んで再来の言葉を告げると秘密の扉に入っていった。



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