恋した鬼姫
見合い
セラは、あれから木箱の中にカギを入れ、自分の部屋にある宝箱にそれを納めた。
扉を開けてしまえば、虎に会いたい気持ちが押さえられなくなるからだ。セラにとって初めての恋だが、セラが気づくのは、もう少し先になる。

いくる日も時は立ち、虎との約束から半年がたった。セラは、虎に言われた通り角のことは、気にしなくなったが、顔を隠すためにベールを外すことはなかった。しかし、一番セラが虎と出会い変わったとしたら、明るくなったことだ。
図書館に閉じこもることも減り、お城の中だが、外によく出るようになった。

セラは、いつものようにお城の庭で花の手入れをしていると知らない若い鬼の男が近づいてきた。

「よい天気ですね、姫様。初めまして。僕は、城の将軍の甥っ子で、ハンスと申します。お目にかかれて光栄です。ところで何をなさっているんですか?宜しければ、僕とティータイムいたしませんか?」

突然現れた男がペラペラと早口で喋るので、セラは、少し引いた。

「初めまして。私もお会い出来て光栄ですわ。ハンス様。でも、私はもう少し花のお手入れをしておきますわ。」

「そんなことは、家来にさせておけば宜しいですよ。姫様の綺麗な手が汚れてしまいます。」

セラは、少しハンスのことが苦手な感じがした。
優しい言葉のようだが、なんだかハンスの言葉に刺があるようで、セラは嫌な気持ちにさせられたからだ。

セラは、それでもハンスに会釈をすると花の手入れを続けた。

ハンスは、少しそれを眺めていたが、黙って城の中へと行った。
ハンスが去るのが分かり、セラも本当は、花の手入れはもう終えていたが、しているふりをしていただけで、手を止めた。

「急になんだったのかしら。変わった人ね。将軍様の甥っ子様と言っていたけど、お城に何の用なのかしら。」


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