恋した鬼姫

パーティーの日がやってきた。
セラのドレス姿は、いつも以上に気品溢れる華やかな姿だった。ベールは着けたままだが、そんなこと気にならないくらい綺麗だった。

セラは、パーティーが開始されるまで一人で部屋にいた。セラが窓の外の星空を眺めていると部屋のドアをノックする音がした。
セラが返事をすると何も言わずにいきなりハンスが部屋に入ってきたのだ。

セラは、ビックリして立ち上がった。

｢姫様。なんというお美しい姿なんだ。｣

｢ハンス様！いきなり部屋に入ってこられては困ります！｣
セラは、少し声を張り上げた。


｢しっ。そんな大きな声で怒らないで下さい。誰かに気づかれてしまうではありませんか。いいではないですか。僕は、姫様の未来の夫になるのだから…フッフッフ。｣
ハンスは、不気味な笑いをした。

セラは、それを見て怖くなり部屋から出ようとしたが、突然ハンスが腕を掴んできた。

｢お離しくださいませ！ハンス様！誰か呼びますよ！｣

それを聞くとハンスは、急に真顔になり、セラを窓の方へ突き飛ばした。

｢キャッ！！｣セラは、ハンスの行動に恐怖を感じた。そのせいでうまく言葉がでず、大声を出せなくなった。


笑顔がなくなったハンスが真顔で言った。

｢姫様は、まだお分かりでないようだ。今日のパーティーは余興でしかない、僕達の婚約は決まっているのも同然なんですよ。｣

そして、ハンスは乱暴にセラのベールを外した。

｢…美しい。僕は、一度幼少の頃にあなたの素顔を見たことがありましてね。その日から僕はあなたが欲しくてたまらなかった。僕は、今まで一度も欲しいものが手に入らないことはなかったんですよ。だから、姫様も王の座も全て僕の物だ。｣
ハンスの顔が笑ったが目は笑っていなかった。

セラの体は、震えていた。

｢怖がらせるつもりは、ありませんが、僕には逆らわないほうが身のためですよ。では、またパーティーでお会いしましょう。くれぐれも口を慎み下さいませ。｣

そう言うとハンスは、セラの部屋から出ていった。セラは、堪えてた涙を流した。