恋した鬼姫
王の所に城の見張り番からの伝言を伝えに家来がやってきた。

話によると、先ほど婆やが馬車を走らせ、城を出たことが告げられた。

王は、婆やが裏切りセラと一緒に逃げたしたことに腹をたてた。
ハンスは、王の目の前に膝待ついて言った。

「王様、ご安心下さい。僕が兵士を連れ、必ずしも姫様をお連れ帰ります。」
王は、そんな立派な姿のハンスを信頼し、全てのことを任すことにした。

ハンスは、少数だが兵士を連れ馬を走らせ、セラが乗っている馬車をおいかけた。

「許さんぞ!この僕に恥じを欠かすとは、姫様は僕の物だ!老いぼれのババアなぞ始末してやる。」
ハンスは、兵士達も遅れをとってしまうくらいの物凄いスピードで馬を走らせた。
10分もしない内に、ハンスの目の先にセラを乗せた馬車が見えてきた。

ハンスは、見つけるや否や急に鬼の角の力を使った。片手で手綱を持ち、もう片方の手を天高く伸ばした。
ハンスの手には、光りが集まり、その光りを馬車に目掛けて投げた。光りは、雷に変わり馬車のギリギリ横に落ちた。

物凄い音と光りで婆やもセラも驚いた。
セラが馬車の後ろから窓の外を覗くと、馬に乗ったハンスと兵士達が追いかけてくるのが見えた。

「婆や!大変よ!ハンス様たちが追いかけてきてるわ!」

婆やは、それを聞くと返事もせずに馬にムチを入れ、無我夢中で逃げた。



「ハンス様!姫様が乗っているのに、なんてことをなさるのですか?!」
兵士がハンスに話しかけた。
ハンスは、持っていた剣をスッと抜くと兵士の胸に突き刺した。兵士は、そのまま馬から落ちて動かなくなった。
それを見た他の兵士は、言葉を失った。

「僕に逆らえば、皆こうなるからね。」
兵士達は、ハンスの一言で恐怖を感じ、ハンスが命じるままに動くことにした。


婆やは、森の中に逃げ込んだ。段々、道らしい道もなくなってきた時に、ハンスの雷が何本も飛んできた。何とか避けてはいるが周りの木々は、燃えつき炭になっていった。
婆やは、いきなり馬車を止めた。
「婆や!どうしたの?!何かあったの?」

森の先には、大きく深い谷底になっていて道がなくなったのだ。
後ろから、ハンスの声が聞こえたと思ったら、雷が馬車の歯車に当りセラと婆やは、馬車ごと谷底に落ちていった。
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