恋した鬼姫
「おや、これは!」
お婆さんは、紋章を見ると驚いた。
「本当にこれを持っていた人をあんたは探してるのかい?」

お婆さんは、何か知っているようだが、あまりの驚きようなので、セラは気になった。
「お婆さん、それを持っていた人のことを知っているのですか?

しかし、お婆さんは返事に困っていた。セラには、どうしてお婆さんが黙ってしまったのか、セラにはわからなかった。
お婆さんは、また鉢巻きについている紋章を見ると、少しため息をつくと話し出した。

「これはね、闇の盗賊団の紋章だよ。お前さん、本当に知らないのかい?誰もが知っていることだよ。一体、何処から来たんだい?」

セラは、困った。人間の国のことは、全くわからなく、お婆さんが言っている盗賊団と言うものが何かもわからなかった。

セラは、信じてもらえないとわかっていたが、自分が鬼で別の国からやって来たことを告げた。
お婆さんは、困ってしまった。今、話をしている子に騙されているのでは、それとも狸に化かされているのではないかと半信半疑になっていた。

セラは、お婆さんの様子から、きっと信じてもらえていないことを悟った。

「お婆さん、ごめんなさい。お忙しいのに、私の話を聞いていただいて、すぐに立ち去りますので。」セラは、お礼を言うと静かに部屋の襖を開けた。

お婆さんが振り返ると見たことのない装いをした美しい娘がいた。目の色を見れば、人間ではないことは、すぐにわかった。

お婆さんは、ゆっくりと立ち上がりセラに言った。
「お前さんが言ったことは、本当だったんだね。信じてあげれなくて、ごめんよ。にしても、これまた綺麗な鬼さんだ。」
お婆さんは、ニコニコしながらセラを見た。

「私が怖くないのですか?虎様が言っていました。鬼と言うのは、人間の国では恐れられている者だと。」

「虎様?あぁ!ここで知り合った人のことだね。そうだね。鬼と聞けば、恐ろしいけど、お前さんを見てると笑顔が溢れてしまうくらい美しいよ。」
お婆さんの笑顔にウソはなかった。セラは、少し照れた。

しかし、お婆さんはもう一度セラの装いを見たと思うと考え込み始めた。

「…お婆さん?」
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