恋した鬼姫
セラの服は、汚れや破れがひどく、何よりも人間の国ではない格好だった。
もし、このままセラが人間の国を歩き回れば、目立ってしまう。お婆さんは、何かを思いついたと思うとセラに建物の中で少し待つように伝えた。
セラは、キョトンとしていたがお婆さんに言われた通りに部屋で待っていることにした。

セラがお婆さんを待っていると、先ほどまで気にもしていなかったが、何日も食べていないことに気づき無性にお腹が空いてきた。
何か食べる物はないか、セラは部屋の中を見渡したが、あるはずもなかった。
セラがため息をついていると、

「今、戻ったよ。」お婆さんの声が聞こえた。

セラは、浮かれた気持ちになり、急いで襖を開けた。お婆さんは、大きな風呂敷を担いで部屋の中に入った。

「よっこらしょ!」お婆さんは、風呂敷を置くと中から笹の葉で包んだ物をセラに渡して言った。

「お腹空いているだろ?握り飯でもお食べ、急いで作ったから形が悪いがね。」セラは、食べ物と聞くと嬉しそうに包みを開けた。

「わぁ〜!美味しそう。」セラは、自分がお姫様だと言うことを忘れるくらい大きな口でかぶりついた。握り飯は、塩だけの味付けだが、米の一粒ずつが瑞々しく甘味があった。
「こんな美味しい食べ物は、初めて食べました。」セラは、涙を流しながら喜んだ。

「おやおや、大げさだね。鬼の国では、握り飯はないのかい?」

「ありません。だから、とても嬉しくって!」
そう言いながら、またかぶりついて食べた。
今までセラは、お城の中で毎日同じことの繰り返しで、お腹を空かせるくらい体を動かしたこともなかった。

「いっぱい疲れていたんだね。」
お婆さんは、そう言うとセラがノドをつまらせないように持っていた竹でできた水筒をセラに渡した。

セラは、食べ終わるとお婆さんに質問をした。
「お婆さん。その大きな包みは、何?」

お婆さんは、セラの質問にニコッと笑うと風呂敷を開いた。

「お前さんにだよ。」

「えっ?私に?!」


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