恋した鬼姫
風呂敷の中には、赤色の可愛らしい着物が入っていた。
「まぁ!素敵。これは、人間の国のドレスですね。」
「ドレス?これは、着物と言うんだよ。さぁ、着てごらん。」
そう言うと、お婆さんはセラに着物を着せた。
「よく似合うよ!」

セラは、喜んでいたと思ったら、急に沈んだ顔になった。
「お婆さん。こんなに色々して頂いているのに、私何もお礼ができなくって…。」

「何を気にしているんだい。私が好きでやっていることなんだから、素直に受け止めておくれ。」

それを聞いたセラは、また微笑んだ。

風呂敷の中には、まだ何か入っていた。藁でできた傘だった。

「お婆さん。これは、何?」
お婆さんは、いそいそとそれをセラの頭の上に被せた。
「これはね、傘といって人間たちは、日差し避けにしたり、雪よけに被ったりするんだよ。お前さんは、見た目も目立ってしまうからね。これで少しでも顔を隠せるだろ。」

お婆さんの沢山の親切にセラは、嬉しかった。

お婆さんは、セラに一つ提案をした。待ち人がいるなら、その間お婆さんの家に一緒に住まないかとセラに聞いた。
セラは、戸惑っていたがお婆さんの好意に甘えることにした。

二人は、部屋から出た。お婆さんの家は、神社のすぐ近くだとセラは聞いたが、赤い鳥居から先に進んだことがないので、ドキドキしていた。
お婆さんは、そんなセラを見ると何も言わずに優しくセラの手を握った。

「大丈夫だよ。」

そして、セラはお婆さんと一緒に手を繋いだまま赤い鳥居を潜った。

セラは、見たことのない風景に辺りをキョロキョロした。
「これこれ、珍しいのはわかるが、そんなにキョロキョロしてたら怪しまれてしまうよ。」
「ごめんなさい。」セラは、恥ずかしく頬を赤らめた。

「ほれ、家が見えてきたよ。」
お婆さんが指を指す方を見ると木でできた小さな家が見えた。近づくにつれ、家の庭には鶏が放し飼いにされていたり、家のすぐ横には小さいが水が透き通った綺麗な川が流れていた。

「さぁ、今日からお前さんの家でもあるんだから遠慮しないでお入り。」
セラは、お婆さんの家に入った。

セラは、不思議な気持ちになった。姿形が違うのにお婆さんの家の中は、まるで神社の建物の中にいた時の居心地良さと同じだった。


< 25 / 71 >

この作品をシェア

pagetop