恋した鬼姫
セラは、歯を食い縛りながら、悔しい気持ちに絶えた。
しかし、一年も立たない間にセラは、気弱な姫ではなくなっていた。心を強く持てるようになった。
そして、必ずここから出てお婆さんの所へ帰ろうと思った。

セラは、牢屋の何処かに抜け道はないか、牢屋のカギが開かないか、いろいろと試したが全くもって歯が立たなかった。

「お婆さん、どうしているかしら。きっと寂しがってるわ。」
セラは、小さな空気穴から、外を見た。
そしたら突然その穴に真っ白な鳩が止まった。
セラは、持っていた鶯の笛をそっと吹いた。
鳩は、答えるかのように鳴いた。セラは、嬉しくなった。
セラは、何か思い付いた。
「そうだわ。鳩さんとお友達になってお婆さんに文を運んで貰えるかしら!」

セラは、なるべく暗い色をした布を探して破ると石の中で書けそうな石を探した。
「合ったわ!」

セラは、急いで文を書いた。その間にも鳩に自分の食べ物を分けたり、笛を吹いたりして仲良くなろうとした。鳩もセラに大分警戒心が無くなっていった。

セラは、文を書き終わると鳩に食べ物を食べさせながら、お願いをした。
「鳩さん、お願いです。この文をお婆さんに渡して下さい。きっと、私のことを心配しています。町外れの小さな家です。どうか、お願いします。」セラは、そう言いながら鳩の足に布を縛った。

鳩は、そのまま外に飛んでいった。

セラは、無理だと分かっていたが少しでも希望があるなら、それに賭けたいと思った。


セラが座ったまま呆けていると、二人組の家来が突然牢屋を開けたと思うとセラを無理矢理連れ出した。
「離して下さい!どこに行くのですか?!」

セラは、金で出来た部屋に連れて来られた。そこには、殿様の姿が会った。
殿様は、静かに茶をたてていた。

家来達は、セラを金の部屋に入れるとそそくさと何処かへ行ってしまった。

金の部屋では、セラと殿様が二人っきりになった。
「一服どうじゃ。」殿様が口を開いた。

「貴方は、私を欲しがってどうしたいのですか?」
セラは、質問をした。

「飾りじゃ。綺麗な物や珍しい物を欲しがるのは、普通じゃろ。」
殿様は、また平然と冷たい言葉を言った。
それを聞くなりセラは、殿様が心の無い人だとわかった。
< 30 / 71 >

この作品をシェア

pagetop