恋した鬼姫

喜助とセラは、何処か、ぎこちないまま旅を続けていた。
途中から、川沿いを歩くようになり、喜助が言った。
｢もうすぐで里に着くよ。セラには、まだ言ってなかったけど、俺達の里は隠れ里になってるんだ。里の皆が…闇の盗賊団って名の盗賊なんだ。｣

セラは、驚いた顔をしなかった。

｢はい、お婆さんから聞きました。ですが、あまり詳しくは教えて頂いてもらっていません。｣

｢まぁ、良くは思われないかな。盗みをしたりするからね。｣

セラは、驚いた。虎も喜助もセラにとっては、そんなふうには見えないからだ。

｢ちなみに、セラが言ってる虎様ってのは、俺達、盗賊団で一番偉い方なんだぜ。だから、俺達は、お頭って呼んでんだけどね。｣

セラは、又々驚いた。だが、すぐに理性を保ち、落ち着いた口調で言った。
｢私は、虎様が何者であろうと、構いません。私の中での虎様は、とても優しく真の強いお方です。｣
喜助は、それを聞くと余計に胸が苦しくなった。

歩いていく内に、行き止まりになっていて、滝が流れていた。
｢よしっ！着いたぞ。｣

セラは、周りを見渡したが、滝以外は岩の壁しかなかった。
｢喜助さん、何処に里があるのですか？｣
セラは、キョロキョロとした。

｢言っただろ。隠れ里だって。｣
喜助は、そう言うと突然滝の中に入って行った。
セラが、固まって見ていると、犬がセラを滝の方へ押してきた。

｢えっ？えっ？！｣セラは、犬に押されるがまま、滝の中に入った。

滝の中に入ると、空洞になっていた。セラがそのまま歩き進むと、灯りが見えてきた。

そして、空洞を抜けると、草花があり、民家がある普通の村が目の前に現れた。

｢…ここが、虎様のいる場所なのですね。｣
あまりにも、盗賊団の住みかとは思えないほど、穏やかで平和そうな村なので、セラは不思議になった。そして、本当に虎がいるのか心配だった。

セラは、草花の道を喜助と共に村へ向かって歩いていると、





｢元気そうだな。｣
紛れもなく、虎の声がした。