恋した鬼姫
「虎様?!」セラは、辺りを見渡した。

「ワァッ!!」虎は、突然木から逆さまになった状態で、セラの目の前に現れた。

「キャッ!」セラは、ビックリして尻餅をついた。そして、泣いた。

「あれ?泣くほど怖かったか?!すまん。」虎は、慌てたが、セラは泣きながら立ち上がり、黙ったまま逆さまになった虎に、抱きついた。

「ちょ、ちょっと待て!落ちる!」そう言いながら、虎は、木から落ちてしまった。

セラは、一緒に倒れ込んだが、それでも虎に抱きついたままだった。

喜助の中で、嫉妬心が沸々と沸き上がっていた。


虎は、泣いているセラの涙を拭いて、セラと目を合わせるなり、頭を撫でた。
「すまなかったな。辛い思いをしたのに、すぐに行ってやれなくて。でも、会いたかったぞ。」
虎の一言で、セラがどうして会いに来てくれなかったと、会った時に言おうと思っていたが、もうどうでもよくなった。

虎は、セラを連れて自分の屋敷に戻って行った。そして、その光景を見届けた後、喜助も自分の家に戻った。

虎の部屋で、セラは鬼の国で起きたことから、今までのことを全部虎に話をした。
虎は、黙ったままセラの話を辛そうな目をしながら、聞いた。

「短い間に、沢山の経験をしたんだな。よく頑張ったな。安心しろ、今日からセラの家は、この里だ。」虎は、セラの頭を撫でながら、言った。
セラは、虎の屋敷にある部屋の一つに住むことになった。

「あっ!そうだ。里の皆には、セラの事を異国の者だと伝えてある。鬼とは、信じないからな。」
セラは、納得をした。少し変に思っていた事があり、それは、喜助が虎から聞いたと言っていたが、やけに理解をしているなと、不思議に思っていたからだ。

そして、虎の屋敷には、里の皆が集まって、新しい里の仲間になったセラのために、宴会が始まった。
セラの周りを、沢山の里の男達が囲った。質問の嵐にセラは、緊張しながら応対をした。

それを見ていた虎は、言った。
「今日からセラは、俺の妹だ。手出ししたら容赦ないぞ。」
セラは、嬉しい気持ちと複雑な気持ちが半々になっていた。
何気に、それを聞いていた喜助は、心の中で喜んでいた。


セラは、ふと虎の方を見ると綺麗で色っぽい女を両側に座らせて、楽しく笑っている姿を見た。
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