恋した鬼姫
「まさか、セラが鬼だったとはね。セラが里を出る時に、これを落としていったんだ。」
喜助は、そう言うと鬼の国と繋がる鍵を虎に見せた。

喜助は、虎がセラを追い掛けて旅立った後、その鍵で扉を開き鬼の国へ迷い込み、鬼達に捕まった話をした。

「知っているかい。あそこにいる鬼は、セラの婚約者になる筈だった奴だぜ。アイツに協力するって条件で人間の国に帰してもらったんだ。もちろん、殿様もあんたに恨みがあるから、全面協力って訳だ。セラを独り占めしようとした罰だな。」
喜助は、まるで心が壊れたかのように高らかに笑った。

なんと、ハンスも人間の国に来ていた。

虎は、セラから話を聞いていたので、ハンスを睨み付けた。

ハンスは、虎と目が合うと虎を見下ろしたまま、笑みを浮かべた。


「俺は、あんたからセラを引き離せればそれでいい。お別れだ。」
そう言って喜助が行こうとした時、殿様の合図と共に数本の矢が喜助の体に突き刺さった。

「…なんのつもりだ、殿様?!」喜助は、叫んだ。


「お前は、もう用済みだ。喜助。」
殿様の一言を聞いた喜助は、悔しそうな顔をして、そのまま倒れた。

「喜助!!」虎が喜助に駆け寄ろうとしたが、後ろから不意打ちをつかれ虎は、気絶をしてその場で倒れ込んだ。


町では、号外が配われた。

内容は、明日の朝に盗賊団のお頭が処刑されると書かれてあった。


その頃、セラは何も知らずに海辺にたどり着いていた。

何度も振り向いては、虎の姿を探したが、虎はまだ来なかった。


セラは、砂浜に座り込み海を眺めながら虎を待った。

必ず来てくれると信じ。
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