恋した鬼姫
次の日。
そして、いよいよ放課後の時間が迫ってきた。

授業の終わりのチャイムがなると、愛子は急いでせらの机に向かった。

「ほらっ!急いで。愛しの君が待ってるんだから。」愛子は、笑いながら言った。

「やめてよね。そう言う言い方。」
せらは、照れくさそうに答えた。

二人は、図書室に向かった。向かっている途中の廊下では愛子がせらに何を言うか決まったか聞いていた。

「そんなの思いつかなかったよ。初対面でいきなり世間話してもひいちゃうでしょ?」
せらは、困った顔で愛子を見た。

愛子は、真剣に考えてはいたが、面白くてたまらない気持ちが顔に出ていた。

「じゃあ、せらが探していた本をその人が昨日見てたんでしょ?その本がどこに置いているかを然り気無く聞いたら?」

「どこが然り気無いのよ。」
せらは、目を細めて愛子を見た。
「はっはっ。…まぁ、なるようになるって言ってこい!」
愛子は、思いっきりせらの背中を叩いた。

ドンッ。
せらは、思わず転けそうになったが前に人がいてぶつかったので転けなかった。
せらは、慌てて謝った。

「気をつけて。」
ポツリとその人は、答えた。

せらは見上げてその人の顔を見た。
図書室であった金髪の男の子だった。

せらは、あまりの驚きに固まってしまった。
その間に男の子は、その場からいなくなった。

「愛子…。今の人だったの。昨日、図書室であった人って。」
せらは、真っ赤な顔で幸せそうに言いながら、後ろにいた愛子に振り返った。

しかし、なぜか愛子の顔は真顔で沈黙していた。

「愛子?どうしたの?」

「私が先に目をつけてたのに…。」
愛子は、小さな声で言った。

「えっ、何?聞こえないよ、愛子?」



「私が先に好きになったんだからね!」
愛子は、突然大きな声を出すと泣きながら走って行った。

せらは、呆然となったが直ぐに気がついた。愛子が言っていた好きな先輩ってさっきの人だったということを。
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