恋した鬼姫
二人の時が止まる
そして、次の日の放課後。
せらは、教室から誰もいなくなっても気づかないくらいまだ悩んでいた。

一日中、愛子と目も合うこともなく、愛子に無視をされていた。

せらは、ふと窓の外を見ると日も大分暮れていた。せらは、慌てて教室を出た。
トラが待っていることが気になり、図書室に向かった。

せらは、図書室の前に着くと立ち止まり、なかなか中に入る勇気が出なかった。

その時、図書室の中から話し声が聞こえた。
トラの声だった。

せらは、ドアをソッと開けるとトラが椅子に座り他にもう一人本棚で隠れていて見えなかったが、会話をしている様子だった。

せらは、声がかけずらく立っているとトラがせらに気づき笑顔になり立ち上がった。

そして、本棚に隠れていた人が出てきた。
それは、愛子だった。

愛子もせらに気づくなり、せらを睨み付けた。

せらは、動揺し図書室から逃げるように飛び出した。

トラは、慌ててせらを追いかけた。

愛子は、悔しそうな顔で二人の姿を目でおった。
愛子は、トラがせらを追いかけて行ってしまったことで、よりいっそうせらに対して恨んだ。

その頃せらは、廊下でトラに捕まっていた。

「なんで急に逃げるんだよ。」
トラは、息を切らしながら言った。

「…お邪魔だったと思って。」
せらは、トラに顔を背けたまま言った。

トラは、少しムッとした顔でせらを見ていた。

「別にさっきの子とは、そんな中じゃないし、昨日俺から約束して呼んだんだから、邪魔なわけないだろ。」

せらは、トラの顔を見た。

せらに是非読んでほしい本があると言うと、おもむろにせらの手をひいて図書室に戻った。

図書室に戻ると愛子の姿がなかった。

トラは、せらを椅子に座らせると本棚から一冊の本を取り、せらに渡した。

「これって!」
その本は、せらが探していた[恋した鬼姫]だった。

せらは、嬉しそうに本を開いた。

せらが本を読んでいる間もトラはせらの横に座り、静かに読み終えるのを待った。
そんなトラにも気づかないくらい、せらは本に集中していた。

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