恋した鬼姫
それでも盛り上がる感情を押さえることは、出来ず二人は、少しでも時間があれば何をするわけでもなく、一緒にいる時間を過ごした。

愛子は、たまにそんな二人を見かける度に、せらへの憎しみを募らせていた。


そして、あんなにも仲良かった愛子とせらは、たった一つの恋によって、一生友情が引き裂かれる事件が起きた。
それは、愛子の憎しみによって起きた。

日曜日。

トラと一緒に映画を見るために、朝からせらは支度をしていた。

突然、携帯がなり開くと愛子からメールがきていた。
(話があるの。いつもの公園で待ってるから。)と言う内容だった。

せらは、携帯を見るなり急いで家を飛び出した。

久しぶりに愛子から連絡がきて嬉しくてたまらなかった。
愛子と何を話そうかと考えながら、走って公園に向かった。

公園にたどり着いたが、まだ朝早くだったので霧で視界が悪かった。

それでもせらは、愛子の姿を探した。


公園の滑り台のほうで人影が見え、せらはおもむろに話しかけながら近づいた。
「愛子、愛子なの?」

しかし、近づくごとに視界がはっきりしてきて、人影は一人ではなかった。
そして、愛子ではなく、怖そうな男が三人いた。

せらは、後ずさるように後ろに下がった。

「あれ!もしかして、せらちゃん?!」
一人の男がせらに話しかけてきた。

「えっ?どうして私のことを知っているんですか?」
せらがそう言うと三人の男達は、ニヤニヤと笑いながらせらに近づいてきた。
せらは、なんだか怖くなり逃げようとしたが、あっという間に男達に囲まれ逃げ道がなくなった。

「私、友達と待ち合わせをしているんです!そこをどいて下さい。」
せらは、怖い気持ちを堪えて言った。

「あぁ、愛子だろ。愛子にせらちゃんと仲良くしてあげてって言われたから。俺達待ってたんだぜ。」男は、笑いながら言った。

せらは、何が起きたのか、あまりのショックで声が出せなかった。

「そういうわけで、俺達と仲良くしようぜ。せらちゃん。」

せらは、ハッと気づくと一人の男に体当たりをするなり、慌ててその場から逃げ出した。

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