恋した鬼姫
「二人の幸せなんて絶対に認めないんだから。」愛子は泣きながら、包丁を握る手を震わせた。

しかし、トラは何も理解が出来なかったが、激しい激痛にもかかわらず、不思議と落ち着いていた。


そして、呟くように言った。
「千年待ったんだ。…でもこれでまたせらと出会えるな。…ありがとう。」

トラは、そう言うと橋の手すりから体を乗り出し、川へと落ちていった。

「…。」
それを眺めるように愛子は、言葉を失った。


ドボンッ!
まだ現場に残っていた警察官は、トラに気づくなり川へ飛び込み、助けに向かった。

他の警察官は、橋の上にいる愛子の元へ走って向かった。


トラは、助け出されたがもう息をしていなかった。




その後、愛子は警察署で事情聴衆を受けたが、何も覚えていない状態で、自分の名前も思い出せない記憶喪失になっていた。長い年月を警察病院で過ごした愛子は、その後行方をくらませた。


愛子が捕まってからの話だが、愛子の変貌ぶりはまるで何かに取りつかれたように別人になっていたと愛子の知っている人達は噂した。
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