恋した鬼姫

番外編・千年後のハンス

｢はぁ〜、マジでダルいわ。｣
小学四年生、生田 はじめ(いくた はじめ)。
ハンスの生まれかわりである。


｢おはよ！はじめ君。今日は、誰をイジメるの？｣
嬉しそうに話しかけて来たのは、いつもはじめに引っ付いている加藤　真(かとう　まこと)だ。
はじめは、大人の前では優等生だが、クラスではイジメっこの主犯だった。
はじめは、教室を見渡した。ふと、見ると机に座っている女子を見つけた。
女子の名前は、中尾 美代(なかお みよ)。
クラスの中でも目立たない女の子である。

はじめは、美代を見るとニヤッと笑った。
｢よしっ！決まったぞ。ターゲットは、中尾 美代だ。｣

｢えっ、マジで？女子をイジメるの？｣
いつもはじめと一緒にイジメをしている真だったが、少しためらうように言った。

はじめは、真の表情を見るとにらめつけた。
真は、オロオロと目を泳がせ、下を向いた。

｢ごめん、はじめ君。何でもないよ。｣
真が、どうしてはじめに逆らうことが出来ないのか。それは、はじめの父親が経営している会社に真の父親が只の平社員として勤めているからだ。真だけでなく、クラスの殆どが父親の繋がりではじめに逆らうことが出来なかった。
だから、誰も大人に言うこともなく、大人達が気づいていたとしても何も口にすることはなかった。

はじめは、真に指示した。
真は、美代に近づくと突然頭から鉛筆の削りカスをかけた。

美代は、ビックリして振り向いた。
｢何するのよ？！｣

美代と真が目を合わせた。美代は、ハッと気づき後ろの席を見た。

美代の目に移ったのは、薄ら笑いをするはじめだった。
そして、クラスのみんなも今回のターゲットが美代だと気づくと、次々に鉛筆の削りカスを美代の頭の上にかけてきた。

美代は、涙をこらえるために体を震わせた。

その日は、美代にとって一番最悪な１日となった。美代のイジメは放課後まで続いた。

しかし、はじめは少しつまらなかった。何故なら、いつまでたっても美代が逃げ惑うこともなければ、泣きじゃくることもなかった。
美代は、何をされてもグッとこらえ耐えていた。

痺れをきかせたはじめは、自ら動いた。

学校の校門から出る美代のあとをつけた。