恋した鬼姫
美代は、はじめにつけられていることには気づかず、足早に家の方へ帰る途中だった。

今日の出来事を早く忘れたいために、少し早歩きになっていた。

はじめは、美代に見つからないように隠れながら追いかけた。はじめは、どうやって美代を泣かせようか考えていた。

はじめが見ていると、美代の前から走って美代に駆け寄る小さな男の子が見えた。
男の子は、美代に駆け寄ると笑顔で抱きついた。

「お姉ちゃん!おかえり。」
美代の弟の駿(しゅん)である。

美代は、駿の顔を見るとニッコリと笑った。
「ただいま、いい子にしてた?叔母さんに迷惑かけていない?」
美代の家は、2年前に母親と父親を一度に交通事故で亡くしていた。

そして、父方の叔母の家で面倒を見てもらっていた。

駿は、美代に問いかけられたが、急に笑顔がなくなり、下を向いた。

その時、家の玄関の扉が開き、叔母が出てきた。
「やっと帰ってきたの。全く、あんたの弟はどうしようもないね。幼稚園に迎えに行ったら、先生に週に一回はお弁当の日だからって、私に作ってこいって言ったのよ。なんで、私があんた達にそこまでしてやらなきゃならないのよ。あんたは、お姉ちゃんなんだから、あんたが作りなさいよ。」

叔母は、そう言うと美代をにらめつけた。
「すみません。叔母さんに迷惑かけてしまって、気を付けます。」
美代は、そう言いながら叔母に頭を下げた。

駿は、美代にしがみついたまま泣きそうな顔になっていた。

叔母は、いい足りないのか、それでも美代に小言をいい続けていた。

隠れていたはじめは、それを見ると美代の方へと近づいてきた。

「こんにちは、おばさん。」
はじめは、突然美代の横に立つと笑顔で挨拶をした。

美代は、突然現れたはじめに驚いた。

「んっ?美代の同級生かい?」
叔母も小言を止めた。

「はいっ、同じクラスの生田 はじめです。」
はじめは、満面の笑みで答えた。

「…あっ!生田ってもしかして、生田さん所の息子さんね。あら〜、こんにちは。」
叔母は、はじめがお金持ちの子だと気づくとニコニコと媚びを売るように声色を変えた。

「美代と同じクラスとは、聞いていたけど、よかったらケーキあるから食べていかない?」
叔母は、嬉しそうに言った。
< 71 / 71 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

プクプク

総文字数/928

ノンフィクション・実話1ページ

表紙を見る
今、帰ったよ。

総文字数/1

ファンタジー1ページ

表紙を見る
紅茶の時間 〜60キロのプリンセス〜

総文字数/637

恋愛(ラブコメ)2ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop