カラス君と黒猫さん
ベージュのコート、大きいボストンバッグ、すっきりしたスーツに身を包んだ、白髪が混じった黒髪の、父。
「今日来るなら電話してくれれば良かったのに」
「ちょっと驚かそうとしててな。いやぁ、須王が居てよかった」
「確かに。誰も居なかったら虚しいよね」
バッグを床に置き、コートを脱ぐ父。
あぁ、全く変わらない。
寧ろ、前会った時より若々しく見える。
「父さん、あんま変わってないね」
「そうか?お前は何か雰囲気ががらりと変わったな」
「・・・・・・・・・・そう?」
ソファに腰を落ち着ける父の前に座る。
前回会ったのが、確か1年くらい前だったから、久し振りの再会になるなぁ。
「で、彼女でもいるのか?」
「・・・・・・・何でそんな話になるの?」
「質問を質問で返すんじゃない。答えろ!」
「いないよ。」
「・・・・・なんだお前それでも高校生なのか・・」
「すごいテンション下がったね」
眉を顰めて怪訝そうに俺を見る父。
あぁ、俺より思考が若いな・・・・・・。
「いやぁお前、健全な男子高生に気になる女子は一人二人いるもんだ」
まだ聞くか、この人は。
俺は少し考えた。