カラス君と黒猫さん
気になる、女子。
「・・・・あぁ、いたよ、父さん」
「おっ、誰だ?」
「だけどね、凄く頭が良くて毒舌で手強くて掴みどころが無いんだ。到底敵わないよ」
顔を上げる。
目を輝かせた父が、俺を凝視していた。
「須王っ!!お前って奴は!好きな子にはアタックあるのみだぞ!そんなっ・・もじもじしてたらいい子なんて居なくなるんだ!勇気をだせっ」
「いやあのね、そう言うアタック系な女の子じゃない。価値観が全く違う女の子なんだ」
「見たい」
「は?」
「見たい、その女の子」
「無理」
何を言ってるんだ、この人は。
家に来て10分もしない内に恋話になって、“見たい”なんて。
「執着のない須王がそこまで夢中になる女の子を見てみたいぞ、父さんは。」
「夢中じゃないよ。それにね?怖いんだよ、本当。」
「なにっ、怖いのかっ?!」
「あぁ、怒るとね。」
顎に手をやり、少し考える父。
「いやいや、これは俺によく似てきたな。俺もな、はじめ母さんと出合った時緊張して話もできなかった。それに、母さんは怒るとこわい。おいおい、似てきたな須王。」
「いやいや、あの母さんが?」
「お前は何も悪い事してないから怒られなかったんだ!アレ、本当怒ると怖いから。」
俺は、記憶にある線の細い母さんの姿を思い出してみた。
いや、ないない。