カラス君と黒猫さん
「いただきまーす。」
振り向けば、もう黒猫さんは口にいくら丼お握りを頬張っていた。
そして眉を寄せ、呟く。
「・・・・・微妙。ぬるい。」
「ぬるいのかー・・・・まずそう」
「まず、くは無い。けど微妙」
口をもごもごさせながら満更でも無いような顔で言う。
「ねぇねぇ、カラス君のお父さんっていつ帰ってくるの?」
丁度俺がパンを口に入れたときに、黒猫さんは視線を俺に落とした。
「・・・・・・あぁ、今頃カナダからアメリカに移ったからなぁ。分からない。気まぐれに帰ってくるから」
「早く帰ってくるといいねー」
黒猫さんが屈託の無い笑みでそう言った。
(・・・・・・・いや、二人はもう会わせたくないよ)
父さんが黒猫さんに会ったあの日。
あのまま二人の話が盛り上がって、とうとう黒猫さんは授業を投げ出す程まで会話を楽しんでいた。
その間俺は蚊帳の外。
時々通りがかる先生の目を気にしながらその場に居たって訳で。
「そうだね。父さんも多忙だからー」
「忙しそうだよね」
その場を適当に流し、今はパンに集中しようと思っている。