カラス君と黒猫さん
「カラス君明日〝LAURA〟来ない?」
その一言に、俺は飲み込んだパンを吹き出しそうになった。
それをぐっと堪えて。
「っ、・・・・らうら、って黒猫さんがバイトしてるキャバクラ?」
「そうそう。明日クリスマスでしょ?人員が足りなくてさぁ。」
あっという間に黒猫さんはいくら丼お握りを完食した。
そして机から下り、俺と目線を合わせる。
「クリスマス版からす君・・・・ってどう?」
「女装でしょ。やんないよ」
「あーそんな冷たいこと言わないでー!“幻のキャバ嬢”をもう一度見たいと言うお客さんが多いんだよ?」
「幻は幻で良いじゃん。幻覚的で」
がくり、と黒猫さんが折れた様に項垂れる。
(・・・・・・パンツ見えた)
黒猫さんは男勝りだから何に対しても行動が大胆だ。
黒猫さんのスカートが捲れるのももう慣れてしまった位。
「・・・分かった。明日LAURAで待ってるよ。」
「ねぇ、今の聞いてた?あれ、黒猫さん?こっち見てる?」
「空があおいよ・・・・・」
「黒猫さんー?!」
再びコンビニのレジ袋からお握りを取り出す黒猫さんを見て、諦めがついた。
「・・・・・・行かないからね」
「私この寒い中外でずっと待ってるから」
「・・・・・・男の格好だったら手伝っても良いよ」
「それじゃあ意味無いじゃん」
「黒猫さんにとっての俺って?!」
食べ終わったパンの包装紙を丸める。