カラス君と黒猫さん
「くろねこ?」
俺がそう聞き返すと、その友人は呆れた顔で俺を見遣った。
「なあんだお前知らねぇのぉ?同じ様なニックネームなのに」
「知らない。ってかニックネームって」
「黒音 琴羽って女ぁ。だしょ?名前の作りが似てんのー!!」
へぇ。
俺のほかにもそう言う名前の奴が居るのか。
「本当ネコみてぇな感じでさぁ。不思議ちゃん、だよなっ?」
「そうそう。掴めない、っつーか」
「そうだ!コイツ前、黒猫にナンパして・・・・・・・・・」
友人が、面白いことを喋りだすような口調で続けた途端、授業開始のベルが鳴った。
「ちぇー。んじゃあまた話すなぁ、カラス」
「話さないでぇ!イヤー!」
去って行く、友人。
今の話は記憶の片隅に置いて、見送った。
まさか、それが俺の、平々凡々で最高に退屈の“日常”を狂わせるなんて。